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コンバンわ。
通い慣れたKemiBeachも、今日は朝から様子が違っていた。
低く垂れ込んだ雲。じっとりと湿った空気。そこにたちこめるただならぬ緊張感。まるで台風の前夜のようだ。
手元の時計を見ると、午前11時5分前。とその時、東京湾のはるか彼方、海ホタルのあたりに数本の光の矢が差したかと思うと、みるみる空が割れ、あたり一面が太陽の光と熱に覆われた。ほどなくして南からの強烈な風がBeachを襲い始めた。
ついにこの瞬間が訪れたのだ。
「あいつだ。アイリーンが来た・・・」
長老の一人が口を開いた。その言葉をきっかけに全てが動き始めた。
そう、ついに来たのだ。季節が変わる時、Kemibeachに春を告げる伝説の風、検見川アイリーンが・・・
風速12/m。安定しているが、彼女がいつ牙を剥くか油断はできない。
彼女に近づこうとして命を落としたカイトボーダーは一体今までに何人になるのだろう。
自慢の愛機、9.4/uのコブラが空に舞う。
それからの出来事はとても言葉では言い尽くせない。時間にして30分ほどだっただろうか。
俺達は夢中でアイリーンと戯れた。時に優しく、時に激しく彼女は俺達を翻弄した。
そして突然、その時は終わりを告げた。再び低く雲が立ち込めたかと思うと、あたりは闇に包まれたのだ。
今日のKemi日記はフィクションです。一部を除いて実在の地名、団体、長老とは関係がございません。
エイプリルフールなのであしからず。
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